The Upside of Irrationality


Dan Ariely
心理学と行動経済学の教授である著者による、人間の行動/判断の非合理性についての本。
第1章では早速、ウォールストリートのエグゼクティブのボーナスが巨額になるほど業績は悪くなっていることを実験データを基に示しています。機械的な作業であればボーナスに比例して成果も上がるが、頭脳を使う作業の場合は逆となると言う結果です。まさに欲に目が眩むということでしょう。日本的な、極端に差のつきにくい給与体系の方が業績も良くなるようです。
また、折り紙を使った実験では、難易度の高い作業に関わるほど思い入れが強くなり、その価値を過剰に高く評価するようになることがデータから示されています。
募金についても、被害者の人数と募金の増額は反比例しており、4〜5百万人以上が被害を受けたインドネシア津波より、被害者が4分の1程度のハリケーンカトリーナの方が2倍近くの募金を集めています。一人死亡の殺人事件は大事件でも、100万人の虐殺は統計数字になってしまい実感が湧かなくなるということのようです。
消費/購買行動が気分/感情に影響されることは知られていますが、企業の経営層の行動も特にボーナスが巨額の場合は非合理的になる傾向があるとのこと。日本でも1億以上の役員報酬が公表されるようになりましたが、巨額の報酬を受けている役員の方々は経済合理性に基づいた経営判断が出来ているのでしょうか?気になるところです。