Michael J. Sandel

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
”でおなじみのサンデル教授の新作です。早くも和訳版が“それをお金で買いますか”というタイトルで出ています。
資本主義経済で市場に任せるまま、気が付いたら何でもかんでも金で買えるようになっていた…。米国の議会や法廷の傍聴のためにホームレスを雇い傍聴する権利を売買する会社、温暖化ガス排出権、空港で並ばなくてよいファーストレーンなど良く知られたものから、刑務所のアップグレード、絶滅危惧種のサイをハンティングする権利、入れ墨で額に広告、生命保険の証券買取という赤の他人がある人の生命保険証券を買い取り被保険者が無くなると保険金が入る仕組み、野球の試合でホームランのネーミングライツ、都市全体の清涼飲料納入契約、パトカーへの広告掲載、教育予算削減に苦しむ学校とのスポンサー契約で菓子メーカーなどによる教材という名のもとでの菓子の配布など、枚挙にいとまがない状況です。
生命保険も昔はほとんどのヨーロッパでは禁じられていました。人が死んだら金が貰えるとは何事だと。しかしやがて残された家族のために等のメリットが受け入れられ広まっていきます。それが最近では、従業員には知らせずに会社が保険をかけ、従業員死亡の際は会社が保険金を受けとったり、北米の銀行で預金者に掛け金なしで死亡時$1,000支払うからサインせよと促し、死亡の際は銀行側はその10倍以上の保険金を受け取ったりするケースもあったようです。そして前述の生命保険証券買い取りのように、サブプライムで住宅ローンをパッケージ化して売り出したように、生命保険もパッケージ化して債権として売買もされたそうです。
サンデル教授が子供の頃は、球場では貧富の差もなくファンが同じベンチで声援を送っていましたが、いつからかスカイボックスなる富裕層用の席が出来、球場も貧富により差別される場となってしまいました。
貧富の差が開く中で、何でも金で手に入る社会でいいのかどうか、今一度考えてみる必要がありそうです。