Ripped


Greg Kot
インターネットの普及と共に、Napsterが爆発的に広まった背景を描きながら、従来の音楽業界とこれからについて解説しています。
CDからNapster等による”違法”ダウンロードへの急速な流れは、それまでの音楽業界のあり方に対する反動とも言えます。レコードからカセットが登場し、買い替え需要で一儲け、その後レコード/カセットからCDの登場により再び買い替え需要で一儲け、しかも価格は高止まりの一方、アーティストに入る印税はせいぜい10%。中間層がまさに濡れ手に粟で儲けられる構造が長年続いていました。
そんな業界にとっての最初の”黒船”はラジオでした。ラジオにより、無料で曲が聞けてしまうことに対してかなりの懸念/反発があったようですが、蓋を開けてみればラジオで流れた曲が売上げを伸ばす結果となりました。
2回目の”黒船”はインターネット、無料でダウンロード可能となればCDは絶滅すると危惧されましたが、確かにCDの売上げは減少傾向ではあるものの、”賢い”アーティストはこれを上手に利用し無料ダウンロードでファンを増やしコンサートにて元を取るなど、ネットを効果的に利用しています。
今回の黒船の特徴は、アーティストの知名度の壁が取り除かれたことと言えるでしょう。インディーズ系で有名でなくとも、ブログやFaceBook等に曲をアップして無料ダウンロードを推奨することで、それまで考えられなかったスケールでファンを確保することが出来るようになりました。
大企業をバックに大量消費のコモディティとしての音楽から、万人受けはしなくても特定層のファンの心をしっかり掴む音楽への過渡期にあると言えそうです。
音楽業界はこのように変化していますが、本はどのように変化していくのでしょうか?音楽の場合、それまでの高い価格に対する反動があり、またCDを売らなくてもコンサートで収益を得ることが可能です。一方で書籍は、価格は高めにコントロールされている感はありますが、本を無料でダウンロードしてコンサートに変わる何かで収益を得られるか?と言うところが一番の違いではないでしょうか?ビジネス本であればセミナー等で元を取れるかもしれませんが、小説の場合は当てはまらないですよね。
こう考えると、電子書籍により流通経路が簡素化されて多少価格も安くなるかもしれませんが、書籍無料化が主流になることは音楽に比べると可能性は低そうです。