Great again


Henry R. Nothhaft with David Kline
EN(http://bizbookrev.wordpress.com/2011/09/06/great-again/)
TesseraのCEO他を務める起業家によるアメリカ経済再生に向けた提言の本。
①法規制、②特許制度、③製造業、④イミグレ、⑤政府の研究助成金の5章に分かれています。
アメリカもITバブル以降失われた1年と言える停滞が続いていますが、そもそも昔は一人の給料(主として父親)で一家が十分に暮らせ、湖にコテージまで建てられたのが、現在では共働きでも家を買うのも苦しいのはなぜか?という疑問から始まります。
アメリカの雇用において、イノベーションを製品に移行する際の起業が大きな役割を果たしており、70〜80年代以降次々と国外へ移っていった製造業とともに、結果的にイノベーションが生まれなくなり、起業も減って雇用が減少したと分析しています。
Facebookが5億人のユーザーを獲得しても従業員は1,400人程度、一方でボーイングは15万7千人、ディズニーは14万4千人の雇用を創出しています。
①法規制では、シリコンバレーにオフィスを設置するだけでも消防検査に数ヶ月かかる現状があります。また、法人税は中国など新興国半導体等産業に税の優遇措置を認めているだけでなく、ドイツ、シンガポールなども法人税率を年々下げてきています。アメリカは実は日本に次ぎ法人税率が高い国になってしまったようです。
②起業と密接に関係しているのが特許。シリコンバレーベンチャーでは特許がないと資金を集められないケースが多くありますが、特許検索システムの老朽化、また予算削減によるスタッフ不足、スタッフの質の問題等々により、スピードが命のベンチャーの特許認可に5年以上かかるケースが珍しくありません。
振り返ると大英帝国より独立したアメリカは、一般市民が特許により起業できる仕組みを整えたことにより急速に成長してきましたが、その成長エンジンが機能しなくなってきています。
③一時期アメリカはサービス業とR&Dで食っていくのだという説が支持されましたが、ものづくりをしない国民はイノベーションどころか物を作ることすら忘れてしまうようです。
④移民制度については9.11以降アメリカに入りにくくなったこと、さらに中国やインドからの留学生が卒業後アメリカに留まらず自国へ帰る例が急増してきています。
少子高齢化による市場の縮小と円高で日本の製造業も急速に海外流出が進みつつあります。
大企業にとっては確かにこれが生き残る道かもしれません。ただ、これでは空洞化で国内はますます衰弱していきます。
ものづくり日本による雇用創出のために、中小企業の法人税を思い切って半減し、特許出願料も個人が気軽に出願できるレベルまで下げ、かつ特許審査プロセスはスピードアップし、イノベーションが雇用に繋がる社会を築けないものでしょうか?お手本は、独立戦争後のアメリカにありました。