Silent Spring(沈黙の春)


Rachel Carson
もともと1962年初版ですが、こちらは40周年記念として2002年に出されたものです。著者は海洋生物学者としてU.S. Fish and Wildlife Serviceにて働いていました。
内容は主として殺虫剤(pesticide)/除草剤(herbicide)の環境および人類への影響についてです。殺虫剤や除草剤が土壌に残留し、あるいは河川や地下水に流れ飲料水に混ざり発ガン性の元となったり、また土壌に残留したものが農作物経由で人間の口に入り肝臓などへ悪影響を与えるというものです。また、殺虫剤耐性種が出てくるため、結局新たな化学物質合成とのいたちごっこになる点を50年ほど前に指摘しています。
本書に頻繁に登場する殺虫剤DDT(dichloro-diphenyl-trichloro-ethane)は1874年にドイツの化学者により合成されましたが、殺虫剤としての効果が発見されたのは1939年で、発見者のPaul Müllerはノーベル賞を受賞しています。当時殺虫効果が高く評価されたからこその受賞だとは思いますが、それから20数年後に有害物質として取り上げられるようになるとは皮肉なものです。
日本との関連で言えばミシガン州でJapanese beetle(コガネムシの一種)駆除のためaldrinが広範囲にわたり散布されたエピソードが出ています。
最後の章のタイトルは”The Other Road”、今人類が歩んでいる道はきれいに舗装されたハイウェイで、我々はそこを高速で突き進んでいるが、終わりには災難が待ち受けている、もう一方の通行量の少ない道を選ぶべきというものです。農薬に頼るのではなく昆虫で雑草を抑える方法などが紹介されており、”control of nature”というフレーズ自体が人類の傲慢さの表れだと結んでいます。
それから50年、人類の大部分はいまだに災難へのハイウェイを突き進んでいます。”The Other Road”へ進路変更できる日は来るのでしょうか?