The Rational Optimist①


Matt Ridley

人類誕生以来、分業化とトレードにより社会がどのように発展し、また困難を克服してきたかを描いた本。そもそもページ数自体が多いのですが、内容がかなり濃く面白いため、2回に分けて紹介します。
第1章 現代は良い時代
例えば、1時間の照明を得るために必要な労働力を計算すると、ゴマ油のランプ→ローソク→石油ランプ→白熱灯→蛍光灯の進歩で43,200倍の効率アップとなります。
フォードにより自動車は安くなり、電卓、DVDプレーヤーなど多くのものは分業化により安くなり、価格低下が社会を豊かにしてきました。逆に自給自足は社会を貧しくします。
ルイ14世には498人の召使がいましたが、現在のパリでは我々一般人が当時を遥かにしのぐ多様な食材を手にすることが出来、世界各国の料理のレストランで食事が可能です。
第2章 集合体としての脳
50万年前には肉の多量摂取により脳の大型化が可能となり、8万年前には物々交換が始まりました。この交換によりイノベーションが起こり、イノベーションのネットワークが出来ていきます。狩猟採集生活は他グループとの交易があって発展するものでした。孤立したグループは自給自足となり停滞する傾向が見られました。
第3章 5万年以降、トレードとルールの形成
物々交換のメリットが見出された後は、次第に分業化が進んでいきます。トレードにはお互いの信頼関係が重要です。ある調査によるとノルウェーは65%が相手を信頼すると答えたのに対しペルーはわずか5%で、この結果がGDPにも表れています。
第4章 1万年以降、農業
農業により余剰作物をトレードにまわすことが出来、富が生まれました。生産量のおよそ3分の1から3分の2を自己消費し、残りをトレードに回すのが代表的なところでした。
その後肥料により生産性は向上し、20世紀初頭の食糧危機はハーバー ボッシュ法によるアンモニア製造により免れ、1960年代のインドの食糧危機は農林10号と他の小麦との掛け合わせにより解決しています。
第5章 5千年以降、都市の役割
トレードの場を求めて都市に人が流入し始め、都市が繁栄しました。また地中海沿岸からアラビア海、インド洋へと貿易範囲が広がりました。1920年にはイギリスで消費される牛肉の80%はアルゼンチンからの輸入でした。貿易とは、ジャガイモをコンピューターに替える手段と言えます。経済成長の3分の2は都市部にて起こり、この傾向はまだまだ続きます。2025年に人口2千万以上と予測されるのは、東京、ムンバイ、デリー、サンパウロメキシコシティ、ニューヨーク、カルカッタの8都市です。
第6章 1200年以降、人口推移
人口増加により食糧危機が訪れると言われますが、人類はトレードと分業化によりそれを克服してきました。
次回に続きます。