The Alpha Masters


Maneet Ahuja

CNBCのヘッジファンド専門家の著者による、9つのヘッジファンドについての本。アルファというだけあって錚々たるメンバーが出てきます。
・Bridgewater AssociatesのRaymond Dalio:レバレッジロシアンルーレットのようなもの。いつか頭に弾丸を食らう。
・Man GroupのPierre Lagrange:投資ビジネスで失敗しても犯罪にはならない。
・Paulson & Co.のJohn Paulson:どのマーケットでも常に正しいものはない。
・Avenue Capital Group の Marc Lasry:25年以上このビジネスに携わっているが、退屈した事など無い。
・Appaloosa Management の David Tepper:儲ける時と、負けないようにすべき時がある。
・Pershing Square Capital Group のWilliam A. Ackman:毎年がゼロからのスタート。
・Third PointのDaniel Loeb:レバレッジはかけない。間違ったプロセスを過信するのは、ロシアンルーレットで3回続けて勝ったからと自信をもつようなもの。4回目には弾丸が頭を貫通する。
・Kynikos Associates LP のJames Chanos:我々は財務諸表ジャンキーである。
・Saba Capital Managementの Boaz Weinstein:クレジットリスクをヘッジできる事が分かると、CDSマーケットは雑草のように急成長した。

彼らから共通して学べるのは、直感を信じ失敗から学ぶ、長期的な視野に立つ、感情的にリスクを避けるのではなく時には金を失う事も辞さない姿勢、攻めの姿勢、幅広く意見を聞く、数値化するなどの点です。
人気の株を買って、FXでレバレッジをかけて、と皆がやっていることをやるのではなく、やっていないことをやる事がアルファという存在になるカギかも知れません。

The Way of the Shepherd


Dr. Kevin Leman and William Pentak

マネジメントの7つの秘訣を、羊の群れを導く羊飼いに例えて解説した本。激動の世の中、サラリーマンはまさに迷える子羊という表現がぴったりに思えます。
気になる7つの秘訣とは、
1.群れの状態を把握する:定期的にコミュニケーションをとり、仕事の状態だけでなく部下の状況も把握する。
2.羊の性格を見極める:群れを作るのには良い性格の羊を集める必要があるのと同じように、良いチームには性格の良いメンバーが欠かせません。
3.タグの取り付け=アイデンティティ:羊の場合は耳にタグを付けますが、人間の場合はチームとしてのアイデンティティを持つことです。職場ごとにタグならぬピアスで統一してもいいかも知れませんが…。
4.放牧地の安全確保:組織では、時には自分の部署の部下達を他部署から守る事も必要です。
と合計7つまで続きます。
これであなたも迷える子羊たちを救う救世主となれるでしょうか?

Michael J. Sandel

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
”でおなじみのサンデル教授の新作です。早くも和訳版が“それをお金で買いますか”というタイトルで出ています。
資本主義経済で市場に任せるまま、気が付いたら何でもかんでも金で買えるようになっていた…。米国の議会や法廷の傍聴のためにホームレスを雇い傍聴する権利を売買する会社、温暖化ガス排出権、空港で並ばなくてよいファーストレーンなど良く知られたものから、刑務所のアップグレード、絶滅危惧種のサイをハンティングする権利、入れ墨で額に広告、生命保険の証券買取という赤の他人がある人の生命保険証券を買い取り被保険者が無くなると保険金が入る仕組み、野球の試合でホームランのネーミングライツ、都市全体の清涼飲料納入契約、パトカーへの広告掲載、教育予算削減に苦しむ学校とのスポンサー契約で菓子メーカーなどによる教材という名のもとでの菓子の配布など、枚挙にいとまがない状況です。
生命保険も昔はほとんどのヨーロッパでは禁じられていました。人が死んだら金が貰えるとは何事だと。しかしやがて残された家族のために等のメリットが受け入れられ広まっていきます。それが最近では、従業員には知らせずに会社が保険をかけ、従業員死亡の際は会社が保険金を受けとったり、北米の銀行で預金者に掛け金なしで死亡時$1,000支払うからサインせよと促し、死亡の際は銀行側はその10倍以上の保険金を受け取ったりするケースもあったようです。そして前述の生命保険証券買い取りのように、サブプライムで住宅ローンをパッケージ化して売り出したように、生命保険もパッケージ化して債権として売買もされたそうです。
サンデル教授が子供の頃は、球場では貧富の差もなくファンが同じベンチで声援を送っていましたが、いつからかスカイボックスなる富裕層用の席が出来、球場も貧富により差別される場となってしまいました。
貧富の差が開く中で、何でも金で手に入る社会でいいのかどうか、今一度考えてみる必要がありそうです。

Raving Fans


Ken Blanchard, Sheldon Bowles

先日紹介したThe One Minute Managerの二人による、熱狂的なファンを得る方法についての本。著者の一人Bowles氏はDomoというガソリンスタンド創業時の社長だったそうです。どうでも良い事ですが、lとeの順番を入れ換えると変な苗字になってしまうので気を付けたいところです。
ファンを得る上で重要なのは、①Decide、②Discoverと③Deliverの3つです。
①Decideはつまりはビジョンを決めること。
②Discoverは顧客の欲するものを見出すこと。
③Deliverはサービス内容が常に同じレベルにキープされていること。また、内容を1%ずつ改善していくこと。
話の中で、極上サービスのタクシーの例が出てきます。車は内外共に汚れ一つなく、客の好みに合わせ音楽をかけ、ジュース/コーラの冷たい飲み物の他、コーヒーはレギュラーとデカフェまで揃えており、至れり尽くせり。この話を読んでいて、ふと居酒屋タクシーを思い出しました。主に公務員が対象で問題となりましたが、サービスの内容としてはまさにマーケティングの鑑。この本が出たのは1993年、居酒屋タクシー事件は明るみになったのが2008年。居酒屋タクシーの運転手はビジネス洋書を愛読していてこの本の内容を実行に移したのだとしたら、なかなか勉強熱心ではありませんか?